ムーミンズデイマグ 2024 ~スナフキンからの手紙~
2024.7.31
ムーミンの原作者トーベ・ヤンソンの誕生日である8月9日にちなんでつくられた「ムーミンの日」。この日は、世界中でさまざまな催しが行われ、ムーミンファンにとっては楽しいお祭りの日になっています。
そんな特別な日を記念して、過去7回に渡ってつくられている「ムーミンズデイマグ」。
今年のマグは、2018年と2021年に続いて、ムーミン谷の季節を描くシリーズの3作目。「スプリング」と名づけられたマグは、その名の通りムーミン谷に訪れる春の喜びを表現したデザインです。
両手を上げているスナフキンの後ろ姿に、見覚えがあるという人もいるかもしれません。それもそのはず、こちらは2021年のムーミンズデイマグと同じモチーフ。ただ、全く同じではなく、今年のスナフキンの帽子には春らしい小さな花が添えられています。
スナフキンの春の手紙
“チェーリオ
よくねむって、元気をなくさないこと。
あたたかい春になったら、そのさいしょの日に、ぼくはまたやってくるよ。”
マグのデザインの鍵になるのが、作中に出てくるスナフキンの手紙。
この手紙は、原作小説『ムーミン谷の冬』の冒頭に登場します。
ある冬の日、いつもなら冬眠しているはずのムーミンが目覚めてしまい、それっきり冬眠できなくなってしまいます。しんと静まり返った屋敷の中、ぽつんと立ちすくむムーミンが最初に助けを求めたのは、やっぱりムーミンママ。しかし、声を掛けても、耳をひっぱってみても、ムーミンママが目覚める気配はありません。
途方にくれたムーミンが次に頼りにしたのが、冒頭で紹介したスナフキンからの春の手紙です。毎年秋になると南へと旅立つスナフキンが書き残し、本当なら春になって冬眠から目覚めたムーミンが1番に読むはずだった春の約束。
ムーミンはひとりぼっちの寂しさを紛らわすように、この手紙を取り出して、何度も何度も繰り返し読み続けます。最初はつぶやくように、やがて声は大きくなり、最後には歌うように叫びだします。
生まれて初めて経験する冬という季節を、たった1人で乗り越えなければいけないという不安。そんな恐怖を振り払おうと、自分を鼓舞しているのかもしれません。
このエピソードから感じるのは、ムーミンがいかにスナフキンのことを頼りに思っているかということ。いくら冬眠しているとはいえ、屋敷の中にはムーミンパパもいるはずですが「ママでさえ目を覚まさないなら、他の連中はやってみるだけ無駄だな」とすぐにあきらめてしまいます。
ムーミンにとっては、近くにいる家族より、遠く離れた親友の手紙の方が心の支えになったのでしょう。
厳しい冬を乗り越えて、喜びの春へ
この手紙で勇気づけられたムーミンは、未知なる冬の世界への1歩を踏み出します。
はじめて触れる雪や、延々と続く闇の世界へ立ち向かい、個性的な冬の住人達との交流を経て、少しずつ成長を遂げます。そしてようやく待ちに待った春がやってくる。きっと言葉では言い表せないような喜びを感じたはずです。
暗闇と一面の雪が広がるモノクロームの冬の世界を経験したからこそ、春のやわらかな日差しとともに、少しずつ色付いていく世界がムーミンには輝いて見えたのではないでしょうか。
このマグの絵柄は、単純な春ではなく、冬を乗り越えた後の春に重きを置いて表現しているように感じます。
芽吹いたばかりの新芽のようなやわらかな緑色をメインに描かれたこの絵柄を見ていると、辛いことがあっても、乗り越えられたらきっとあたたかい未来が待っているはず、と勇気づけられます。